肺炎は年間10万人以上の方がなくなる病気で、日本では、がん、心疾患、脳血管疾患に次いで第4番目の死亡原因となっています。
持続する激しい咳、膿のような喀痰(緑色や黄色)、38度を超える高熱の持続、更に悪化すると、動悸、息切れ、呼吸苦が出現、)、食欲も低下、胸痛、身倦怠感なども出現してくると大変です。いわゆる細菌性肺炎と呼ばれるものには肺炎球菌、インフルエンザ菌、ブドウ球菌などが含まれます。
これらとは別に、非定型肺炎と呼ばれる肺炎やアレルギーを原因とする肺炎があります。
その特徴の一つが痰を伴わない、いわゆる“からぜき”の持続です。 “風邪が治ったと思ったのに、咳が何週間も続いて夜も眠れない” “咳が続いて胸が痛い” などの症状でお困りのかた、一度詳しく調べてみませんか?
細菌性肺炎患者の半数近くは肺炎球菌によるものです。肺炎球菌は健常者の鼻や喉に定着していることが多く、痰を検査すれば健康人の喉に50~60%の頻度で見つかるほどの常在菌でもあります。ただ、免疫力や体力が低下すると、増殖して肺炎球菌感染症を発症する事があります。
検査:肺炎患者の尿中肺炎球菌莢膜共通多糖抗原(C-polysaccharide)の検出。
肺炎球菌ワクチン(商品名:ニューモバックス)
肺炎球菌による肺炎は重症化することもあり、高齢者や、何らかの基礎疾患のある方には接種が勧められます。任意接種ですので、自己負担となります。肺炎球菌ワクチンの効果持続期間は約5年間とされており、2009年秋より再接種が可能となりました。
2011年は過去10年で最多で12,000人以上が発症しました。多くは軽症で風邪と区別が付かず、肺炎となるのは感染者の3-5%ですが、5才-35才の若い人が罹る率が多いことが特徴です。また感染後獲得する免疫は弱いので、何度でも感染する可能性があります。症状は、最初は熱、頭痛、全身倦怠で始まり、多くは2-3日で治まります。しかし、その3-5日後に、咳がひどくなり、1か月以上長引くこともあります。咳は痰を伴わない空咳で、とくに夜間強く見られます。その際高熱を伴うこともあります。時には胸膜炎を起こし胸が痛くなったり、肺に水がたまったり呼吸困難になったりもします。感染力が強いので、家族内、学校、職場で集団発生することもあります。経過中に発熱が続き、嘔吐、頭痛等がみられる場合には髄膜炎になっている可能性もあります。
検査:血液検査でマイコプラズマ抗体を測定します。正確には2-3週間空けた2回の血液検査結果を比較し判定します(ペア血清)。発症1週間以内の抗体価(抗体の強さ)、更に2週間経過した後の抗体価を比較して、4倍以上の差があれば確定診断となります。このほか、10分程度で判定できる「イムノカード」もありますが、発病初期には陰性となることもあり、注意が必要です。
ペットから感染することで有名な肺炎で健康な人にも起こります(このクラミジアは性感染症の原因菌となるクラミジアとは種類が異なります)。
クラミジア肺炎の多くは、鳥の糞や羽を吸い込んで感染します。熱はなく(無熱性肺炎)、空咳だけが2週間以上も続くことが多く見られます(ウイルス感染による咳なら2週間程度で改善するのが一般的)。咽頭痛やしわがれ声が長引くのも特徴の一つです。
検査:血液検査でクラミジアニューモニエIgG, IgAを測定します。
循環式風呂から発生したことで有名になった肺炎です。
入浴施設の他、超音波式加湿器、ビルの屋上にある冷却塔等などにも繁殖していることがあります。また、ガーデニングで使われる腐葉土の中に発生していることもあります。温泉に行って、その後、高熱や呼吸困難が起きたらレジオネラによる肺炎を疑う必要があります。
症状:2-10日の潜伏期間を経て高熱、咳、頭痛、筋肉痛、悪感等の症状が起こります。進行すると呼吸困難、胸痛、下痢、意識障害等を併発します。菌力はそれほど強くありませんが、高齢者など体力の弱った人が感染すると重症化し、死亡率は15%-30%と高いです。
検査:痰の培養。
こうじカビの仲間である「アスペルギルス」や、酵母の仲間の「クリプトコッカス」(真菌の一種)など真菌により起こる肺炎があります。一般的には感染力は弱く、免疫力の低下した方や高齢者で問題となります。
アレルギー反応
最近、“夏型過敏性肺炎”と呼ばれるものがあります。これは、高温多湿の夏に増殖するトリコスポロンというカビが原因となりアレルギー反応を起こします。咳や痰・発熱などの軽い風邪のような症状で始まります。毎年同じような症状が梅雨から夏に繰り返す場合には要注意です。
検査:アレルギー抗原検査。