慢性閉塞性肺疾患 (COPD)
慢性閉塞性肺疾患; COPD:Chronic Obstructive Pulmonary Diseaseは、慢性的に経過する呼吸器疾患で、公害、職場などでの有毒なガスや粒子の吸入、喫煙などが契機となり、肺に慢性的な炎症が生じ、結果として肺の組織が破壊されてしまう病気です。
気道炎症は当初は炎症の繰り返しですが、次第に不可逆的となり、ついには肺胞の破壊や気道の拡張、閉塞が生じていきます。慢性閉塞性肺疾患には、慢性閉塞性気管支炎と肺気腫が含まれますが、患者さんの多くは両方の特徴を持つ方が多いようです。
症状
階段の上り下りや、少し体を動かした時に息切れが出現する、痰を伴う咳が何週間も持続するなどがCOPDの主たる症状です。呼吸にともない、ぜーぜー、ヒューヒューという音がすることに気づきます。病気が進行していくと少し動いただけでも息切れが出現し、日常生活にも支障をきたすようになります。
病態
COPDの病態の主な特徴は、気腫により引き起こされる気流の制限と、粘液過分泌や粘液塞栓、気管支痙攣などにより引き起こされる気道閉塞による流入制限です。気道抵抗の増大や肺の過膨張は、呼吸時のエネルギー消費量を増加させます。また、このような状況では、血液中の酸素濃度は低下し(低酸素血症)や、二酸化炭素の放出ができず蓄積し高炭酸ガス血症を生じます。低酸素血症は、肺胞換気が不十分の時のみならず、肺の中で換気されている程度と、血流の程度(換気/血流)の不均衡によっても生じます。病気が進行すると、患者さんは慢性的に酸素不足(低酸素血症)で血中二酸化炭素の高い高炭酸ガス血症に移行します。このような場合、苦しいからと言って急に大量の酸素を投与すると、呼吸抑制が起こってしまう事があります。また、呼吸障害は心臓にも大きな負担をかけることになります(肺性心)。
組織学的変化には、細気管支周囲の炎症細胞浸潤、気管支平滑筋肥大、内腔の狭窄、および肺胞中隔の変形、破壊などが見られます。肺胞中隔の破壊が進むと、癒合してブラと呼ばれる空洞が形成されます。ブラとは、一般に直径1cm以上の気腔と定義されますが、大きくなると正常の肺組織を圧迫し呼吸機能を低下させます。また、咳や運動時などで大きな圧が加わると、壁が破れ、胸腔内に空気が漏れる気胸と呼ばれる状態が引き起こされます。この際には、急に胸痛と呼吸困難が出現します。
診断
レントゲンでは肺は大きく黒く見えます。胸とおなかを分ける横隔膜は丸みを失い、心臓も細長く見えるのが特徴的です。CT(コンピューター断層)では、肺胞が破壊された気腫性変化やブラと呼ばれる空洞、また気管支、細気管支壁の肥厚などが見られます。肺の空気の流れを見るのに、スパイロメーターと呼ばれる呼吸機能検査があります。
COPDの患者さんでは、喘息の時と同様、息は吸えるのですが、吐き出しにくくなっており、1秒量(FEV1)を努力肺活量(FVC)で割った1秒率(FEV1%)と呼ばれる値が70%未満のとき、COPDと診断されます。
COPDの進行具合(病期)は、1秒率と1秒量に基づいて分類されます(GOLD分類)。またCOPDの重症度は、呼吸機能評価に加え、症状;せき・たんの持続、呼吸困難の程度、運動能力低下の程度、増悪の程度から判定されます(下の表をご参考ください)。
呼吸機能(スパイロメトリー)検査は当クリニックでできますのでご相談ください。
1秒率:FEV1.0 / FVC(%) 1秒量/努力性肺活量
%1秒量:FEV1 / expected FEV1 1秒量/予測1秒量
| 病期 |
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特徴 |
| 0期 リスクあり |
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スパイロメトリーは正常 慢性(咳、痰)症状あり |
| I期 軽度の気流閉塞 |
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FEV1/FEV ≧ 70 %
%FEV1 ≧ 80 % |
| II期 中等度気流閉塞 |
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FEV1/FEV < 70 %
50% ≦ %FEV1 < 80 % |
| III期 高度の気流閉塞 |
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FEV1/FEV < 70 %
30% ≦ %FEV1 < 50% |
| IV期 極く高度の気流閉塞 |
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FEV1/FEV < 70 %
%FEV1 < 30 % 又は
%FEV1 < 50 %で慢性呼吸不全 |
GOLD分類 2003年
治療
まずは原因の除去、喫煙はすぐにやめましょう。
病期と治療
まずは禁煙、その他有害と思われる物質への暴露を避けるようにします。
呼吸器のリハビリはどの時期にも大切です。
| I期 |
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早期であれば短時間作動型の気管支拡張薬を必要に応じて使用します。 |
| II期 |
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1種類または複数の気管支拡張薬を定期的に使用します。 |
| III期 |
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上記に加え急性増悪時にはステロイド剤を併用します。 |
| IV期 |
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上記に加え必要があれば在宅酸素療法が適応となります。 |
ネブライザー 以前は良く使用されましたが、定量噴霧吸入器が導入されて以来、あまり使われなくなってきました。
β作動薬 気管支平滑筋を弛緩させ、粘膜繊毛のクリアランスを増大させる働きを持っています。
抗コリン薬 現在よく使われている抗コリン薬(スピリーバ)はムスカリン受容体のM1とM3を選択的に阻害することで気管支平滑筋を弛緩させ空気の通りを楽にします。抗コリン薬であるため、副作用に、目のかすみ、まぶしさ、口渇などが出現することがあります。
吸入コルチコステロイド ロイコトルエン、サイトカインなどと呼ばれる炎症を引き起こすメディエーターを抑えることで、気道の炎症を抑えます。
現在、β作動薬とコルチコステロイドが一緒になった吸入薬がよく処方されます。これは、両者を同時に使用したほうが、単独で使用するより治療効果が高いためです。
酸素療法 在宅での酸素は、PaO2(動脈血酸素分圧)が55mmHg以下、または酸素飽和度SaO2 が88%以下の場合適応とされます。
予防接種
慢性閉塞性肺疾患の方は風邪なども重症化しやすく、呼吸不全など命にかかわる状況になることもあります。インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンはあらかじめ接種しておくことをお勧めします。