脂質異常症とは、血液中の脂質、具体的にはコレステロールや中性脂肪(代表的なものはトリグリセリド)が、多過ぎる病気のことです。血液中にはコレステ ロール、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸の4種類の脂質が溶け込んでいます。血液中の脂肪が異常に増えても、何の症状もありません。そのため、放置してし まう人が少なくないのが現状です。
怖いのは、高脂血症が持続すると、脂質がどんどん血管の内側にたまって、動脈硬化になってしまいます。ついには、心筋梗塞や脳梗塞を起こしてしまいます。
血液中にある4種類の脂質のうち、多過ぎると問題なのは、コレステロールと中性脂肪です。脂質異常症には、
1)LDLコレステロールが多いタイプ(高LDLコレステロール血症)
2)HDLコレステロールが低いタイプ(低HDLコレステロール血症)
3)トリグリセライド(中性脂肪)が多いタイプ(高トリグリセライド血症)
の3タイプがあります。
血液中のLDL(悪玉)コレステロールが多過ぎると、動脈の壁にくっついて動脈が厚く硬くなります。中性脂肪は、それ自体は動脈硬化の原因にはなりません が、中性脂肪が多いと、HDL(善玉)コレステロールが減ってLDLコレステロールが増えやすくなるため、間接的に動脈硬化の原因となります。
日本人の死因の第2位と3位を占めているのは、狭心症や心筋梗塞などを含めた心臓病と、脳出血や脳梗塞などの脳卒中です。
これらはどちらも、動脈硬化が原因となって起こる血管の病気です。さらに動脈硬化は、高血圧を悪化させたり、腎臓病などの原因ともなります。
動脈硬化というのは、心臓からからだの各部分へ血液を運ぶ動脈が硬くなることをいいます。動脈の内側の壁にコレステロールがたまると狭くなり、血管の壁も硬くもろくなります。そのため、血液が流れにくくなったり、つまりやすくなったりします。
動脈硬化はさまざまな危険因子が重なり合って起こるため、それらの危険因子を除いていけば、ある程度予防が可能です。高脂血症も重大な危険因子です。そのため、脂質異常は、自覚症状はなくても、早く見つけて治療することが重要です。
脂質異常症の治療は生活習慣の改善と薬物療法が基本です。生活習慣の改善は、血中脂質を下げるだけのことで、動脈硬化が進むのを防ぐことが目的です。動脈硬化を促進するほかの要素、高血圧、糖尿病(耐糖能異常)、肥満なども生活習慣を改善することでよい効果が得られます。
1)生活習慣の改善とは?
そのおもな内容は、1.禁煙 2.食生活の是正 3.適正体重の維持 4.運動です。
なかでも特に重要なのが食事(食事療法)で、適正体重を目指して努力することが、必要となります。
2)薬を飲み始める時期
どうしても生活習慣が改善できな人や、生活習慣を改善しても血中脂質が下がらないときには、薬物療法を行うことになります。また、家族性(遺伝性)高コレステロール血症の場合には、はじめから薬物療法が勧められます。
一般の脂質異常症の場合は、まず食事療法を3~6カ月ぐらい続けます。それでもコレステロールや中性脂肪値が下がらない場合に、薬物療法が勧められます。また、薬を飲み始めても生活習慣の改善や食事療法、運動療法等を継続的に行うことは大切です。